2011年3月16日 タイムズ紙
これだけの大災害にみまわれながらも国民がパニックに陥るのを最小限に収めたとして、日本のメディア、また冷静さを保つ国民性を称賛する声が世界中から届いている。しかし、それは今回の災害のたった一面しか見ていないのではないか、とタイムズ紙のジャーナリスト、レオ・ルイスは疑問を投げかける。
15日、夜の有楽町。ルイス氏はその不自然なまでにいつもと変わらない東京の風景の中に、不思議な気持ちで立っていた。通常営業する床屋には3人の客が入り、パチンコ店からもにぎやかな音が聞こえてくる。ルイス氏のは、この静けさは、心の中の本当の恐怖を隠すための仮面に過ぎないのではないか、と分析する。
一部では普段の日常を取り繕ったかのように見える一方、東京の大型電気店はもはや、「防災グッズ」専門店と化し、薬局からは、放射能を除去すると噂される(イソジンなど)ヨード剤の入った製品は完全に売り切れの状態。電力節約のため、銀座の数寄屋橋交差点にある有名ブランドビルのネオンサインも消されたままだ。日常と違う異常事態を、東京の住民全てが感じ取っていないはずがない。防災用品や食糧、トイレットぺーパー、電池などの日用品を求めて争う人々が出てくるのも、もう時間の問題なのかもしれない。
一見、異様なほど冷静に見える日本国民のポーカーフェイスの裏に隠されているのは、表面だけでも普段通りに振る舞わなければ、本当の不安や恐怖に飲みこまれてしまうという、一種の強迫観念なのではないだろうか?
とくに福島の原発事故により、関東でも被ばくの可能性があると発表されて以来、東京住民の内なる漠然とした恐怖は、確実にに現実のものへとなっている。
原子力空母を保持する神奈川県横須賀市の米海軍では、基地内で外にいる時間を少なくし、家の通気口は塞ぐようにとの勧告が出された。また、各国の大使館からも、日本在住の者は可能な限り帰国するよう指示をしている。
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